今回のアカデミー賞脚色賞を受賞。オスカー関連は受賞してもしなくても、目を通しておきたいタイプ。そもそも脚色賞って何が評価されたのか判りづらいけど、本作は特にラストのシークエンスについて評価されたのかな？
モンク（ジェフリー・ライト）は売れない黒人作家。「黒人らしさが足りない」と批判された怒りにまかせ、貧困、ラッパー、銃と典型的な黒人のイメージを盛り込んだ"白人が読みたがる"黒人小説を執筆した所、意に反して大ヒットしてしまう。モンクは「逃亡中の指名手配犯」と身分を偽り一躍注目を浴び、"白人が求める黒人"を演じ続けるが—— 。
"黒人らしさ"ってなぁに？？
アメリカの黒人差別は拗れに拗れて今やこんな感じです、というような作品。
黒人の悲劇を寧ろ大いに受け容れる事で自分達の過去の罪の意識を和らげているのか白人達よ。然し乍ら、勝手に作り上げた黒人像にハマった作品でないとヒットしないという皮肉。黒人には他にも語られるべき物語があると力むモンクの努力も虚しく、ステレオタイプな黒人の物語だけが独り歩きしてしまう現実。逆張りをしたら当たってしまうという不条理。
偏屈な主人公をジェフリー・ライトが確かな演技力で肉付けしている。
突然の姉との死別、痴呆の入った母親の介護、五十路の恋…と人生の折り返し地点を通り越したモンクに訪れる様々な出来事を重たくシリアスに描くのではなく、クスッと笑える程度の質量で描いていたのは好感が持てる。愛に不器用な人なんだなぁ。
ラッパーでもなけりゃ、逃亡中の指名手配犯でもないモンクが、無理してスラングを使ってワルぶっている姿が何とも可笑しい。
そして、素晴らしいのがラストシーン。
作家だけに、「このパターンは？」「ではこれでどうだ！？」と3パターンのラストシーンが描き分けられている。
観客を驚かせる仕掛けが用意されている作品は好きだ。
ささやかなどんでん返しが奏功し、何とも小気味良い気分にさせてくれる。
終盤で一気にこの作品が好きになれた。
