クロ

アメリカン・フィクションのクロのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
3.7
アメリカ南部文学の講義で「差別用語なんて見たくない」と言う生徒。
黒人が白人にとって「黒人ぽい」と感じる物を作り、白人が「これこそリアルだ!」と感じて絶賛する欺瞞。
「典型的」な「差別に理解ある白人」

押しつけられる「黒人らしさ」に反発し、抵抗しようとする主人公。

女性がいちいち「女性〇〇」「女流〇〇」と言われる苛立ちと同じだ。有徴化をやめてほしいのだ。

でもこの作品は全てがある意味「典型」を意識して描かれていて(黒人も白人もゲイもジェンダーも)、そんな中であの「黒人形・白人形テスト」の写真が出てくる。
人種分離政策の頃、黒人の子供に黒人の人形と白人の人形を見せて「どちらが悪く見える?」と聞くと、黒人の人形を選び、自分が黒人の人形に外見が似ていることを苦痛に感じたという、社会的メッセージが子供の自尊心を損なっていることを示した実験だ(階段の踊り場に飾るか…?という気もするけど)。
「白人の求める黒人像」に過剰に反発していたのは彼自身の問題でもある、ということだろうか。


日々の生活の中にあるマイクロアグレッション。
文学賞の選考では白人3人と黒人2人で票が割れ、多数決で白人の案を通しながら「今こそ黒人の声に耳を傾けるべきよ」などと言う。社会の縮図だ。

それでもモンクは歩み寄る方を選ぶ。「人生はハードなのよ」というシンタラの言葉が頭をよぎるが、地に足が着いたということなのかなぁ。ちょっと悲しいような気もするし、でもモンクは生きやすくなっただろうとも思う。
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