Asino

異人たちのAsinoのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.2
東京国際映画祭4本目

作品に行き詰っていた脚本家のアダムは、作品の題材である両親と暮らしていた家を久しぶりに訪ねて、そこで思いがけず生前の両親と再会する。
彼はまた、同じ時期に同じアパートで暮らす男ハリーと出会い、ベッドを共にするようになる。

二人のゲイ男性が(世代が違っていても共通して抱えている)友人や家族からの距離感・孤独感を見事に表していて、前半はヘイ監督の過去作の「Weekend」に共通した感じを受けたのだけど、話はどんどん謎めいた方向に進む。
あえて原作や過去の映画を見ずに本作を見たので、途中からちょっと怖いやら予測がつかないやらでとてもドキドキしながら見た。

ゲイであり、部屋にこもって孤独な暮しをしている主人公が、子供のころに事故死した両親との対話を深めていき、カムアウトを経て大人になったからこその両親との「和解」の過程が丁寧に描かれる、というのが話の1つめの主軸。
30年くらい前で時間が止まっている両親は同性愛に対する理解もそのままで、主人公は何度も「今は昔と違うんだ」というけれども、同時に、もっと若いハリーが家族と疎遠であるという事実も描かれ、この作品を今、ヘイ監督が翻案して映画化した「意味」が明確に見えてくる。

アダムが抱えている傷や深い孤独感が次第に明らかになっていく中で、アンドリュー・スコットの繊細な演技が素晴らしいのだけど、混乱する彼のそばに寄りそうハリーの、後半の(特に重大な事実がわかる最後のあたりの)ポール・メスカルももちろん素晴らしいし、でもねえ、アダムの「両親」を演じたジェイミー・ベルとクレア・フォイもすごかったですね。ほぼ4人以外誰も出てこない、かなり閉じた感じの映画だけど、演技お化け対決感がすごかった。

想像してたのの何倍も感傷的ではあったのだけど、単に幼いころに亡くし分かり合えていなかった両親との再会・和解というだけでなく、人が抱える傷や孤独感の他人との共有やそれらとどう付き合うかということについて見事に描き出した映画だったと思う。

なんかぜんぜん感想書けないですけどね。良すぎて。たしかWeekend最初見た時も全然かけなかったんだよなぁ、ということも思い出しました。
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