いけ

異人たちのいけのネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

好きな映画すぎて困った。
今年のベストはこれで決定です。
何なら生涯ベストにしてもいいくらい。
自分のために作られた映画かと思うくらい刺さった。

都会で孤独に生きる物書きのゲイが主人公。
主人公は幼い頃に両親を亡くしており、両親のことを綴った作品を書き始めたことをきっかけに、久しぶりに帰省し当時住んでいた家を訪ねると、死んだはずの両親が暮らしているという話。
あらすじだけ見ると、「ホラーかよ」って思うけど、「いや、ホラーではないんよ。でも、ある意味でこれはホラーの映画ではあるんよ。」
というのも、演出がどこかホラー演出っぽい。
あの世に迷い込んでしまう話だけど、決して怖い話ではない。でも、恐怖について描いている作品でもある。
独身で子供もおらず、恋人もいない、家族もいなくて、寂しいアパートで暮らして、自分はゲイだから世間がイメージする老後はきっと過ごせないんだろうなと諦めている。悲しんでも仕方ないし、自暴自棄にならないために、なるべく前向きに自分を保っている。それでも拭えない将来への不安や孤独感を描いた作品だと思った。

主人公は死んだはずの両親と交流を深める中で、内に秘めた恐怖と対峙していく。
印象的だったのは、何度も繰り返される電車のシーン。
流れてゆく景色と窓に反射した主人公の顔のショットが度々繰り返されるが、これは三途の川を渡ることを暗に表現してるんだなと思った。
それだけでなく、時代は流れてゆくけど、自分の中にしこりのように蓄積される孤独感を表しているようにも思える。
この映画を象徴する本当に美しいショットだった。

両親との交流のシーンはどれも心に残ったけど、特に眠れなくて両親のベッドに潜り込むシーンが好きだった。
両親が亡くなってから、両親との生活を想像していたと語るシーンで大号泣してしまった。
自分も子供の頃、寝付けずに両親の寝室によく行っていたから、その思い出と相まって涙が止まらなかった。
そして、思い出の店に訪れて両親に別れるを告げるシーンも震えながら泣いた。
「即死」だったと嘘をつくのも、クスッと笑いながらも大号泣。

隣人のハリーの部屋を訪れるシーンは、ハリーが殺人鬼だったと一瞬ミスリードしてしまい、一気に涙が引っ込んでしまった。
でも、そうじゃなくて、ハリーも異人になってしまったと悟って更に涙。
こんな悲しい結末あるかよ。

ラストの星になっていく2人は、それまでのシーンとテイストが違いすぎて正直少し笑ってしまったけど、これは原作オマージュなのかな?
そもそもこの映画が1987年の作品を原作にしてるのが驚くくらい、現代の孤独を描いた作品だった。

今回はFilmarksの試写会で鑑賞したけど、一般公開は4/19。
是非ゴールデンウィークの帰省前にもう一度鑑賞したいと思う。
いけ

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