ジジイ

異人たちのジジイのネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

死別によって奪われ、それを取り戻すかのように行われる両親との会話が切ない。しかもそこに同性愛が絡んでくるから、せっかく与えられた機会が楽しいだけの内容にはならない。特に父親と本音で交わされる会話には泣いた。家族とは誰よりも言葉で語らなくても理解できる存在であるが故に、会話や態度の少しの齟齬が致命的な決別に繋がりかねないのだ。親と子の年齢を逆転させることで生まれる理解と赦し。歳若く未成熟であってもなお、惜しみなく注がれる両親の無償の愛。それはまるで魂が直接触れ合っているかのような奇跡の瞬間だ。ラストは個人的にはそこまで響かなったが、クリスマスのペットショップボーイズの「オールウェイズオンマイマインド」の歌詞があまりにハマっていて、また泣いた。

追記1 原作者山田太一さんは亡くなる直前にこの映画を観ることができたらしい。その反応やご家族のコメントなどをまとめた記事があったので貼っておく。

https://t.co/4PAqazZVLy

追記2 原作者は当時そのキャリアの絶頂期にありながら精神的には相当追い詰められていたという。その「言いしれぬ孤独感と精神的な救いを求め」てこの物語を極めてパーソナルな作品として上梓したようである。監督はその意図を十分に理解し、自らの「切実なセルフストーリー」に引き寄せることで、この物語の普遍性を証明してみせた。単なる話題作りとか気をてらった翻案でないことは明らかだと思う。
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