shimeno

異人たちのshimenoのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
5.0
ゲイの主人公+ゴースト

あの時こうしていれば…という後悔は人生でいくらでもあるけど、それを取り戻すかのように癒していく。
ゼロからやり直すんじゃなくて後悔を後悔と知って関係を再構築していくのがとっても沁みた。
この作品では幽霊との対話だけれど、生きてる自分達にもまだ遅くないって言ってくれているようで。

根底にはゲイである苦悩があり、当事者としてバリバリにわかりみが深い。
自分より20近く上の主人公がゲイとして生きることの辛さは測れないほどだけど、自分と年の近いハリー、ゲイじゃなくてクィアって言うぜって言う先進的なゲイとしてアダムと対照させてたけど、理解が進んだ現代だってクィアはまだまだ孤独なんだと感じさせるのはゲイの監督のなせるところだと思う。
きっと監督の人生が多く重なってるんだろうなと思うし、実家は実際に監督が幼い頃住んでた家だと知ると泣ける。
(イギリスは古い家が残っていて良いよね。自分の実家はもう建て直されて無いから)

ポールメスカルは英語圏のゲイの間でホットだと人気のストレート俳優だけど、登場30秒で理解した。何というオムファタール。
ゲイ当事者であるアンドリュースコットも50手前なのに、両親の前で子供に戻る絶妙なバランスが可愛くて。わざとらしくもいやらしくもない素晴らしい演技。

ゲイの話だから感情移入できなかったという感想が意味わからなすぎて、両親(ヘテロ)の愛も描かれていたし、家族愛もかなりメインだったし。
ゲイであるから何となく家族内でも孤独(孤立)してる感覚がわかりすぎるし、結局なんだかんだゲイの息子を理解して恋人すら認める両親の愛、ここまで自分事だと思える映画ないよ。
普段シスヘテロが同性愛映画を性別を超えるとか普遍的な愛とか言うのが嫌いすぎるんだけど、これこそ本物のゲイ側から描かれた普遍的な愛の物語だなあと思う。

愛は愛なんだと言いつつ、ゲイという後ろめたさが一生影としてついて回るこの感覚を可視化してるのすごいな。

ゲイ、特に日本に生きるゲイは嘘をつき続けて生きてると思うんだけど、
最後主人公が両親に、彼に、ついた優しい嘘が他人を救う為の嘘で良いな〜ってなる。

大団円で終わらない少しビターなエンド、思ったよりホラーサスペンスのヒヤッとした空気も描かれていてホラー好きとしても得した気分。
ゴーストだからってフェードアウトしたりしなかったのもとても良かった。
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