コマミー

異人たちのコマミーのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.3
【寂しさを埋めて…】




さて、早速昨日、こちらの"アンドリュー・ヘイ"による"再映画化版"を鑑賞した。

想像以上に…いや圧倒的に素晴らしい映像化となっていてもう見た後涙で溢れてしまった。
そして極めて、"ヘイ監督らしい背景"を詰め込んだ再映画化となったなと感じた。"山田太一さんによる原作"や"大林宣彦"監督による最初の映像化の魅力も詰めつつ、現代らしく、"同性愛者としての寂しさ"も描いていて、更に凄みに磨きがかかった作品となっていた。非常に好きな雰囲気の作品だった。

そう、皆さんも感じたと思うが、彼の初期作"「Weekend」とこの「異人たち」はどことなく似ており"、「Weekend」を作るにあたってヘイ監督は少なからずとも、この原作の事も影響されてるのではないかと私は感じたのだ。

自分を形成する上で、少なからずも"必要不可欠な親の存在の不在"…そして異人として再会した両親への"カミングアウト"…そしてそこにいる大切な人が幻想かもしれないとは言え、生きている内に"できなかった事への喜び"…もしかしたら、この山田太一さんの「異人たちとの夏」に対してアンドリュー・ヘイは、何かしら"影響を受けているのではないか"と思うほど、ヘイ監督の作品の今までの物語の構造部分が似ており、これがうまく交わりあって本作があるのだなと感じ、感慨深い瞬間であった。

そして、本作は"アダム"と両親の物語だけではなく、アダムと"ハリー"の物語だと言う事。それが最もよく表現されているのが、ラストの"ベッドシーン"。アダム以上に、疎外感に苦しめられてたハリーの心をそっと埋めるかのように、"アダムが抱きしめ"、煌びやかなラストを飾る…極めてハッピーエンドだと外からの人間から見たら思えないかもしれないが、アダムとハリーの事を思うと…そう思わずにもいられない瞬間でもある美しいラストだった。"ケイ"がハリーになった瞬間、こんなにも見方が変わるとは…"英雄"がアダムに変わっただけでも相当なのに…。

最高な再映画化だった。大林版よりも登場人物が少なめに、尚且つ現代らしい問題を取り入れた事により、受け取り方も相応に進化したものになっていた。そして、この「異人たちとの夏」が素晴らしいゴースト・ストーリーである事を再確認出来た作品だった。"アンドリュー・スコット"と"ポール・メスカル"の演技も良かったし、両親を演じた"ジェイミー・ベル"と"クレア・フォイ"も、"片岡鶴太郎"さんと"秋吉久美子"さんとはまた別の感動を引き出してくれた。

これから夜空を見るたび、本作を思い出しそうで、ある意味自分が怖いです。
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