かじドゥンドゥン

異人たちのかじドゥンドゥンのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.8
ロンドン在住の劇作家アダムは、12歳の時に交通事故で亡くなったはずの両親と再会。その実家に足繁く通うようになる。他方、彼は同じ高層マンションに住む男ハリーの誘いに応じ、愛を育み始める。

両親が健在の時にはなしえなかった、自分がゲイであるという告白を両親にしたアダムは、これを機に、ハリーとも踏み込んだ関係をもつようになる。やがて、父親から、嘘偽りなく我が息子を愛しているという力強い言葉を得たアダムは、両親(の幻)と訣別し、同性愛者である自分の負い目を克服して生きて行こうとする。しかしその直後に、実はハリーも(ゲイであるがゆえに)孤独死した者の幻影であることが判明。アダムはハリーをベッドのなかでじっと抱きしめ、彼の孤独を自分の孤独としても受け止め、死者を慰める。

同性愛者の心的葛藤を描いている。父親の姿がいつのまにかハリーに変わって、そのハリーと抱き合い口づけを交わすシーンは象徴的か。(しかしそれは、「ステレオタイプ」的とも言える。)映像と音楽にも高い美意識を注いでしつらえた作品。