くさむすび

異人たちのくさむすびのネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

大林版『異人たちとの夏』に乗れなかった反動か、今作はしっくり来た。特に後半の両親との別れのシーンは主人公が別れを切り出すのではなく、両親側から別れを告げるアプローチがすごい良かった。だからこそ突然やってくる喪失という面が大林版より際立っているし、恐らく『異人たちとの夏』通りなら初対面の後に自殺したハリーの死も、より喪失というテーマを強くしている。そこが上手かった。そしてハリーを生かし続けるのは、喪失を超えた先の希望になったかのように写していると自分は受け取った(明るい結末に見えるのは自分がシスヘテロだからかもしれないし、楽観視できるようなものではない可能性もあるんじゃないか)。
クィア要素もアダム自ら言っていたように、同性同士のセックスは死に直結する時代があったことも、生と死という大林版でも描かれていた題材に繋がっているのが良かった。途中のアダムの恐れを描き出すスリラー的な映像は凄く怖かったし、原作通りストレートには行かない作りになっている。それこそが『異人たちとの夏』のアイデンティティでしっかり継承している。でも紛れもなく今作は『異人たち』という一つの完成された作品。
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