ごんす

異人たちのごんすのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.9
山田太一の原作は未読、大林監督の
『異人たちとの夏』だけ鑑賞している状態で観たがそれぞれ雰囲気が違う。
自分は大林版がかなり好きだったことを再認識した。

ストーリーはほぼ同じなのだが主人公、主人公とマンションで出会う人物がクィアの設定に。

80年代のゲイ差別やエイズの恐怖の中クィアの子を持つ親の気持ちや親子関係などは観ていてハッとさせられる所があった。
主人公のセクシャリティを知った両親の反応が印象的。
酷いいじめに遭ってきたことなどを告白した息子に対して「辛かったな」「子供は残酷だからな」などと寄り添った後で父が「俺もクラスメイトだったらおまえをいじめてたと思う」と吐露する所が辛かった。

良い映画だと思う一方で大林版の鶴太郎演じる父が好き過ぎたのか親子のやりとりが本作はどうしても説明くさく感じてしまった。
勿論本作とは設定が違うので単純に比較できるようなものではないが鶴太郎パパの「よく一人で生きてきたな、大変だったろ」という江戸っ子感溢れる一言は観ているものに勝手に自分の人生を振り返らせるぐらいの力があった。
生き生きとしている親を見て色々なことを考える豊かさがあったように思う。
特に大人の年齢になったが全然大人になれてないと感じるものには堪らなかった。

本作では親からの視点、特に息子の寂しさに気付いてケアしてあげられなったことに対する想いが強く入ってきていることが自分には少し窮屈に感じた。
異なるラストシーンは凄く良い。
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