horry

異人たちのhorryのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
5.0
私的にパーフェクトな作品でした。
かけてほしかった言葉、抱きしめてほしかったタイミング、泣いていることを知ってるなら部屋に入ってきてほしかったこと。もう叶わないことだから、自分を捉えて離さない事々。そしてHIV/AIDS禍によって打ち込まれた心の楔。
寂しさを抱いて生きることで硬くなってしまった心というテーマは普遍的なものであり、それが家族や親密な人とのつながりによって解されるというのも普遍的なのですが、この作品が素晴らしいのは、普遍をゲイ男性の個人の物語として描き、80年代〜90年代の空気を入れ続けることによって、誰のものでもない歴史にしている点です。
子どもの頃に聞いていたLPジャケットに優しく触れるとき、それがどんなバンドでいつの音楽でどんな気持ちで聞いていたかということが詰め込まれている。

ああ、この光の使い方だ、と惚れ惚れしてしまうシーンや、温かな画面、セリフやプロットだけに語らせるのではない映画の力を見て、久しぶりに胸がドキドキしました。
horry

horry