蛇らい

異人たちの蛇らいのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
3.6
各映画作家がパーソナルなイシューを表現できる容れ物として、とても優れた原作と言える。優れた物語はどんな作家性を持ってしても、抱え込めるということかもしれない。

他人との関わりから生まれる物足りなさを憂う反面、ほっとかれることの安心感も同居している複雑さが印象的だった。時代は変わっていると父に告げる主人公は、時が過ぎたことによって改善した事実もあれば、両親が生きていた時間から否応なしに過ぎゆく時間の経過を同時に含みを持たせる。

マイノリティである2人が、彼らしか住んでいないマンションで出会うことで圧倒的な必然としても受け取れる。もう1人の自分や過去の自分が、窓ガラスや鏡の反射の構図を用いて雄弁に描かれている。

大林宣彦版の『異人たちとの夏』で見られた直接的なホラー展開はないものの、サブリミナル的に挿入されるフラッシュバックのようなショットは中々に怖がらせてくれる。
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