Dick

異人たちのDickのネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

❶相性:中。
★マイ評点60点

❷時代:現代。

❸舞台:ロンドン。

❹考察。
①オープニングはロンドンのタワーマンション。100戸 前後あると見られるのに住人は、高層階に住む主人公の脚本家・アダムと、6階のハリーの2人のみで、両者はゲイ。
★これだけで疑問符が幾つもつくが、換言すればリアルでないということ。即ちファンタジー又は夢幻の世界であることが理解出来る。
②物語1:独身のアダムは、12歳の時に交通事故で両親を亡くして以来、孤独な人生を歩んできた。42歳となる今は、両親との思い出を基にした脚本を執筆中である。その取材のため、幼少期を過ごした郊外の実家を訪ねるが、何とそこには30年前に他界した両親が事故前のままの姿で生活していた。当初は驚く3人だったが、すぐに仲睦まじい安らぎの時を過ごすようになる。アダムは、両親に自分がゲイだったことを告白する。
③物語2:アダムは、同じマンションのハリーと知り合い、恋に落ち、肉体関係を持つようになる。
④物語3:両親から今後の為もう会わないでおこうと告げられたアダムは、3人で最後の食事をする。
⑤物語4:ハリーの部屋を訪れたアダムは、ハリーの腐敗した死体を見つける。ハリーは2人が初めて出会った日に死んでいたのだ。そこにゴーストとなったハリーが現れて、2人は抱き合う。

❺まとめ
★物語の形態は、ファンタジーではなく、主人公による夢幻の世界だった。
①少年時代に自分がゲイであることを隠していたアダムは、両親が事故死したため、そのことを両親に永遠に告げられなくなり、長年のトラウマになっていた。その問題を自分自身と向き合い、自分自身で解決する物語。
②作り手の気持ちは理解するが乗れなかった。

❻『異人たちとの夏(1988)』との比較
★タイミング良く、今月BS松竹東急で放映されたのを録画して観たので、本作と比較する。
①作品概要:監督:大林宣彦、脚色:市川森一、原作:山田太一「異人たちとの夏」。1988年キネ旬ベストテン日本映画3位、助演女優賞(秋吉久美子)、助演男優賞(片岡鶴太郎)受賞。日本アカデミー賞最優秀脚本賞(市川森一)受賞。
★マイ評点80点
②両者の原作は山田太一の小説なので共通点が多いが、異なる点も多い。
ⓐ主人公・原田(風間杜夫)は40歳の人気脚本家。12歳の時、交通事故で両親(風間杜夫、秋吉久美子)を亡くしている。妻子がいるが離婚してマンションの6階に一人住まい。そこは都心のオフィスビルなので、夜になると、原田と若い美女・桂(名取裕子)の2人のみになる。原田の良き仕事仲間でTV局のプロデューサー・間宮(永島敏行)は、原田の別れた妻に恋心を持っている。
ⓑ原田は浅草の実家で死別したはずの両親と再会し、何度も会うようになる。
ⓒ原田は、同じマンションの3階の桂と愛人関係になる。
ⓓ原田は両親と会うたびに衰弱していく。桂は異人(幽霊)との接触が原因なので、もう会わないでと忠告する。
ⓔ原田が料亭で両親との最後の食事を済ますと、両親は消えていく。
ⓕそれでも原田の衰弱は止まない。実は桂も幽霊だったのだ。男にふられた桂は、原田に迫ったのだが、拒否されたことで自殺していたのだった。原田は幽霊の桂と関係を持ったのである。
ⓖ愛欲に狂った桂は、原田を引き込もうとするが、事情を知った間宮の協力により原田は助けられる。
★大林版はファンタジーであり、辻褄が合っている。協力者・間宮を登場させたことで、説得力がある。ロジックとして納得出来る。
★アンドリュー・ヘイ版は、ファンタジーではなく、主人公による夢幻の世界であり、自己完結の物語である。何でもありの夢落ちなので、欲求不満が残る。
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