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異人たちのzhenli13のレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.4
観終わって、何というか、しんとした気持ち、沈思と言ったらいいのか、午前零時をまわった道を歩いてたらこの歌を思い出した。

パラソルをかざしてゆくよ有史より死者は生者の数を凌ぐに 佐伯裕子


生きてひとりの寂しさのままに、しかし寄り添い続けたい者があることは「健全さ」を放棄することになるかもしれない。それをこの映画は受け容れている。
その点で大林監督の『異人たちとの夏』とは大きな違いがあるし、こういう概念を提示した映画も案外少ないのではないか。

また両親(の亡霊)が達観しておらず時間が止まったままのメンタリティで、特に母(クレア・フォイがとてもいい)はマイクロアグレッションともいえるような戸惑いを見せつつもゲイである息子(アンドリュー・スコットもとてもよかった)を愛して受け容れていくのもよかった。
ちなみに『異人たちとの夏』は決して嫌いではない。

どちらかというとアピチャッポン作品を思い出したがあのアニミズム的な佇まいとは一線を画しているし、先日観たばかりのクロード=オータン・ララ『乙女の星』の美しいラスト同様でありながらも『乙女の星』では結実し得なかったものがここで成就したようで、しんと考えてしまうものがあった。愛するということ。

https://filmarks.com/movies/16938/reviews/82624791
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