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異人たちのksのネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

見終わって自分の中に湧き上がる感情に呆然としてしまう体験は久しぶり。
ある特定の孤独を早くから抱える人の、一番身近な人たちにずっと「言ってほしかった」「知ってほしかった」が詰まっている映画すぎて、わたしは中盤からずっと泣いてた。マスクがびしゃびしゃになってしまった。
思い出そうとすると泣けてくる。無理。すごくつらい。でももう一回劇場で見たい。

一回見終わると「あの時のハリー」にハッとさせられる(ポール・メスカルの演技うますぎか)。孤独を飼い慣らす努力をずっとしてきて、でも無理が影ににじむアダム(アンドリュー・スコットもすごすぎか)とタワーマンションから見える鮮やかな景色の対比が、美しいだけにいっそう空虚でつらい。

同性愛者をめぐる社会は(80年代から)大きく変化した。とはいえ、アダムより大体二回りほど若いであろうハリーでさえ、両親にカムアウト済であっても受け入れられてはいない(あなたがゲイでも構わないが私たちの前でそれとわかる振る舞いをするな、つまり透明な存在である限り許してやる、という。そりゃ帰省なんかできるもんか)

アダムの両親は彼が小さい頃に亡くなってるので、幽霊なんだなーと受け入れたし、ハリーは自宅で孤独死した種明かしがあるのでやっぱり幽霊なんだなーと納得するんだけど、アダムも結局幽霊だったのかな……と6階からハリーを連れてきてベッドで抱きしめてあげるのを見てそう感じた。(原題がstrangersのところall of us strangersになった理由は、他に同じタイトルの作品があって検索されにくいからだと監督がインタビューで語っていたが、本当にそれだけか?とも思っていたし)
初めの方で、マンションの火災報知器が鳴って、アダムだけ建物の外に出る。彼は火災で亡くなっていてその体験をループしてるのかなあとか、色々考えてしまった。
なので「現実」は必ずしも生者の世界だけを指すわけではないのかなと。あなたの生、五感で得たものすべては幻なんかじゃないよ、という肯定。
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