lili

異人たちのliliのネタバレレビュー・内容・結末

異人たち(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

原作未読で観たけど、途中までは、これはグリーフケアについての、「回復」の物語なんだな、と思っていたら、最後にあんなの……嘘でしょ……全部彼の幻想だったってこと……?と普通に打ちひしがれて帰ってきた。正直、クィアのハッピーな物語しか見たくない、こんな展開勘弁してくれと思ったけど、時を経て変わったように思えた世の中は、まだハリーが生きていられたほどには、十分変わってはいなかったってことか。あまりに重たいメッセージ。ただ、受け止めきれていないからかもしれないけど、原作では主人公はゲイという設定ではないらしいから、そのあたりは正直若干チグハグになっているんじゃないかと思ってしまった(思いたかった)。
役者さんたちが本当に見事。アンドリュー・スコットは、「大人」の「男性」たるもの悲しんだり弱みを見せたりしてはいけない、という抑圧と規範を、とても自然かつ魅力的に飛び越えていたように思えた。それは彼がゲイ(クィア)として生きてきた経験によるところが大きいのかもしれない。中年男性だって、悲しみを抱えているし、弱さを抱えているし、愛されることを求めているのだと。アンドリュー・スコットとポール・メスカルの相性が素晴らしい。ジェイミー・ベルは存在自体が天使のよう。クレア・フォイは葛藤と愛を見事に表現していた。それだけに、やっぱり、彼らには幸せに生きていってほしかったよ…。むしろ、これがすべて幻想だったら、アダム自身を含めてすべてが幻想だったなら、と思いたいけど、どうなんだ……?
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