予告編を見た際に同性愛的なシーンがあったので、この作品は鑑賞するのをためらった。だがそれは杞憂であった。
近年LGBTがストーリーに関係なく登場するケースもあり、正直辟易していたのも事実です。しかしながら、このストーリーでは主人公がゲイ(クィア)であることが意味をもちます。
この物語は、山田太一さんの「異人たちの夏」がもとになっていますが、大人になった主人公が、かつて亡くした両親にあうことが軸になっています。
この性癖を両親に隠して生きてきたこと、告白できなかったことに意味があり、両親に会う嬉しさと、後ろめたさがうまく表現されていました。
ここは、主役のアダム(アンドリュー・スコット)の演技が素晴らしかった。シャーロックのモリアーティ役でもそうでしたが、実に光と闇を演じることが上手な役者さんです。
今回の闇を余すことなく表現していました。
そしてボーイフレンド役のハリー。
最後に彼の今が明らかになりますが、包み込むような優しさと、家族のいない孤独感が実にうまく表現されていました。
ラストシーンは色々な解釈がされるでしょうし、また正解はない気がします。ただ自分が見た印象とした感じでは、あの場面で全て終わった気がします。決して絶望ではなく、頂点を迎えての、満足な終焉。それが不幸とは誰も言えないのではないでしょうか。