け

異人たちのけのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.1
よすぎる本当によすぎる。
世の中にはヘテロの物語が多すぎるのでそれを同性愛に翻案することには数のバランスをとるうえでもまず意味があるが、そのうえでその二つの連続性だけでなく差異…クィアあるある「親にカムアウトする」とかいう超絶ストレスイベント(クローズドな人もいるのは前提で) など…も明確に示すのがえらい。

再会してからの母との会話で、うわ〜これカムアウトしないまま死に別れたパターンだ〜とか思って『アメリカン・フィクション』の兄弟を思い出してたら、1分後くらいにさらっとカムアウトしてて、それだけで彼が何度同じような状況を生きてきたかを突きつけられる。
恋人との会話でも、just checking out you’re queer→「クィア」には慣れない、とか、セックスが死に直結する時代があったとか、彼は一世代上の人だと感じる場面が多々あった。
また、苦しみが今もふいに強く湧き上がる…みたいなセリフが、ほんとうに切実だった
電車や悪夢など、孤独や苦しみの映像表現がさすがだった

大林版は「家族」を理想郷として描きすぎてる部分もあり、それに対して本作はカムアウトを差し引いても、親に対する子の複雑なあり方…愛せないけど、愛しているみたいな…を本当にうまく表現してくれたと思う。
0.9ぶんの減点は、やはりこれを原作とする以上、彼らの愛は此岸でこれからも続くわけではなく、それはハッピーエンドを必要とするクィアには不足だと思うから。でもこれも、Power of Loveを使って頑張って美化(いい意味)されていたと思う(Gabrielle Aplinのカバーしか知らなかった!🙏)
け