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異人たちのsinginggizmoのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.0
40代の孤独なゲイの男性が、自分の子供の頃の思い出を元に脚本を執筆するため故郷を訪れると、当時住んでいた家に導かれ、12歳の時に事故で亡くした両親との不思議な交流が始まる。
現在の自宅の高層マンションでは、もう1人の住人であるゲイの若い男性との恋愛関係が始まる。

幻想と現実の境目が曖昧で、不思議な感覚になるとともに、両親や恋人との触れ合いに優しさが溢れていて、温かく切ない感情でいっぱいになる。
たまに差し込まれるスリリングな演出が効いていて、実はやばい世界に踏み込んでいるんじゃないかという危うさも感じさせる。
幻想の美しさと危うさがバランスの良いトーンで描かれていて、没入感があり素晴らしかった。
特に両親との交流は、自然な温かさがあって親子の愛情に癒される。
別れのシーンは号泣。

またサントラが素晴らしかった!
主人公が生まれた80年代の音楽が流れ、それがとてもマッチしていて心地良く、印象に残った。
同じ80年代生まれとしては、懐かしさでより切なさが増した。
実際聞いていた音楽ではなかったが、キラキラしたポップなサウンドから確実にあの時代の空気を感じた。
特にペットショップボーイズの「Always on my mind」の歌詞とサウンドが、この作品のテーマに本当にぴったり。

原作の情報も何も知らずに観たので、もっと一般的なヒューマンドラマかと思いきや、いい意味で予想外のものをみせて貰えて得した気分。
原作は中年男性と若い美女の恋愛関係を描いているようだけど、主人公がゲイの男性に改変されているのも個人的には良かった。
オジサンと若い美女の恋愛じゃ、よくある中年男性の夢かよ…とげんなりしそうだったので…(笑)
トレンドだからということではなく、監督自身がゲイだからこその設定改変に、リアリティと説得力があった。
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