トモロウ

異人たちのトモロウのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.3
原作未読。本作を観る前に大林宣彦監督の『異人たちの夏』を配信で鑑賞。2つの作品を比べながら一緒に考えてみる。

本作は脚本家山田太一の小説「異人たちの夏」をイギリスのアンドリュー・ヘイ監督が映画化。幼くして両親を亡くし、孤独な人生を歩んできた脚本家アダムが死別した両親やミステリアスな隣人と交流するというストーリー。

舞台が日本とイギリスと異なることで宗教や風習の違いによって故人を偲ぶお盆とクリスマスという時期の違いでタイトルが『異人たち(の夏)』になっている。

本作でアダムがゲイであることを両親に告げる場面で、母親は難色を示すのに対し父親は理解しようとする。大林版では父親とキャッチボールをするシーンがとても印象的だった。

本作の劇中で流れる曲、ペットショップショップボーイズの「Always On My Mind」が個人的にとても好き。この曲はもともとブレンダン・リーという女性歌手が歌っていた曲でほかにエルビス・プレスリーもカバーしていた曲。内容は恋人へのラブソングだが作品の中ではちょっと意味合いが変わっている。ちなみにこの曲はクリスマスの定番らしい。

両親との別れのシーンでは大林版ではすき焼きという日本人のご馳走的な場で少しずつ薄くなって消えていくのに対して本作ではイギリスのダイナーのようなお店でカットが変わった瞬間に消えていくという演出の違いで別れに対しての寂しさの余韻が違った。

原作と大きく違う点で主役がゲイということに賛否両論あるみたいだが、私自身原作未読ということもあるかもしれないが個人的には賛寄り。監督自身がゲイでそれが作品に投影されるのは不自然なことではないし原作へのリスペクトが感じられた(原作未読だが…)

隣人との別れのシーンについて大林版では胸にアザがあることでコンプレックスや苦しみとの決別、本作では相手がゲイということで苦悩や葛藤の受容の違いだと解釈した。個人的には『異人たち』のラストが美しく感じた。

両作を観比べるとテイストや原作の解釈の違いや演出方法が異なるがどちらの作品も良かった。
トモロウ

トモロウ