イトウモ

異人たちのイトウモのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
2.0
『ブエノスアイレス』がやりたかったのかな、という印象。

親たちが暮らしているのが浅草でないことの味気なさももちろんあったが、それ以上に場所の希薄さに問題がある。自宅からの電車の距離感、家の立地というのがまるでない。
幽霊話になったときに、主役を現実に引き止めにくる出版社の脇役がいないのも大きな改悪だと思った。

つまり、結末からも分かる通りこの映画には戻ってくるための現実がないので、親と子、恋人同士というのが自他の境界をなくして絶えずエモーショナルにくっついていく息苦しさ、しめっぽさが充満している。それ自体は半透明な窓に映った自分の顔と景色との同化という繰り返されるモチーフが示している。自分と自分以外の区別がつかない幼さを楽しむ映画であるところにかなり違和感を持った。

『荒野にて』を先に見ておいてヘイ自身がロケーションに興味のない監督でないとあらかじめ知られたことが救いであった

キャストの人数の少なさ、ロケーションの貧しさからして撮影日数や予算規模に問題があったのだろうか、と勘繰りたくなった