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異人たちのazusaのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
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終始、どこか異国を一人で旅するような浮遊感があった。アダムの抱える孤独を本当に繊細に描いている。冒頭のアダムの印象は物書きの自立した男性だが、それは彼を見た目で判断した偏見にすぎないと自省した。それはハリーも同じで、むしろ彼の抱える孤独がアダムを一歩踏み出させるのを見ていて、悲しみと幸せが入り乱れたような何とも言えない気持ちになった。失ったものを再び失うこと、でも今回は消えてなくなるわけではない。姿は見えずとも、アダムが欲していたものを残してくれる。アダムの孤独感に共感を覚える。原作「異人たちとの夏」の英題は"Stranger"なのに対して、本作は"All of us Strangers"(私たち異人のすべて)となっており、つまりそういうメッセージも含んでいるのだろう。原作は未読だが、本作は脚本アレンジによって現代を生きるより多くの人に響くのではないだろうか。
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