Gierck

軽蔑 60周年4Kレストア版のGierckのレビュー・感想・評価

軽蔑 60周年4Kレストア版(1963年製作の映画)
4.8
ジャン=リュック・ゴダール監督、 ラウール・クタール撮影。
ブリジット・バルドーよりもフリッツ・ラングを映画の画面に登場させるための映画とも言えるかもしれず、その意味では「軽蔑」の主演はフリッツ・ラングとも言えるかもしれない。
自分勝手な製作者ジャック・パランスに翻弄される映画監督フリッツ・ラング本人として登場しており、その「悲哀」が映画のフリッツ・ラングにも満ちているのであるが、それを悪として描いているというよりは「悲哀」そのものを描こうとしたように見える。
ブリジット・バルドーにおいても同様で、いわゆるセックスシンボルとしてのBBをそのまま本人が演じているようにも見え、冒頭のうつぶせの裸体を惜しげもなく披露しているシーンは、本人のステレオタイプをゴダールのフィルターを通して描いたと言ってよいであろう。
ミシェル・ピコリとBBは、ジャック・パランスと出会って以降はお互いの会話がすれ違い続け、ひたすら「停滞」することとなる。
何ひとつ前に進まない「停滞」はある時期までのゴダール映画のひとつの象徴でもあるが、「停滞」の間にBBは衣服や髪形を変え、風呂に入り、食事を用意しようとして、結局食事もしない。
ミシェル・ピコリにおいても銃を持っていくのであるが、結局使用しないままあっけない幕切れとなる。
ただそんな「停滞」の中、最後にふと映した海ショットが素晴らしい。
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