ツクヨミ

軽蔑 60周年4Kレストア版のツクヨミのレビュー・感想・評価

軽蔑 60周年4Kレストア版(1963年製作の映画)
4.9
美ロケーションショットで紡ぎ出される映画界と人間関係における"軽蔑"。
ジャン=リュック・ゴダール監督作品。公開60周年記念でカンヌプレミア上映された"軽蔑"がミニシアターにやってきた、個人的に最近ゴダールまみれなのでめちゃくちゃ楽しみに足を運んだ。
まずオープニング、重いSEにびくっとしつつ黒背景赤文字でLE MEPRISのタイトルバックがさらにインパクト抜群。すると唐突にローポジションかつ斜めの構図美で撮影している場面を映し、ゴダール本人によりスタッフが読み上げられるのがマジで最高すぎる。次第にカメラによってくる撮影隊と"今作は欲望の具現化を映像にしたもの"というメタ視点もまた実にゴダールらしいし、やっぱり60年代前半ゴダールは最高だなとうっとりしちゃう。
まあ本作は倦怠期夫婦ものであり破局映画でもあるストーリーになっており、そこに映画界の裏事情をしっかり見せる裏舞台映画になっている二面性ある作品だ。なのでフェリーニの"8 1/2"っぽい印象があるのだがそこはゴダール、相変わらずの文学などの引用会話がわけわかめだし"勝手にしやがれ"のホテルぐだぐだ会話よろしく長すぎる夫婦喧嘩会話シークエンスからしてやはり一筋縄ではいかない。しかしよく見てみれば夫婦関係の綻びの決定的場面がしっかり見えるし、わりかし破局映画としてちゃんと納得がいく作品に仕上げているのがすげぇ。でも同じく1963年の"8 1/2"みたいに映画業界の闇より優先する話があるテイストがあるのは同じだったりするが。
あとはなんといっても今作、ゴダール作品の中でもビジュアルに関してはトップクラスなんじゃなかろうか。チネチッタや豪邸.カプリ島のロケーションショット.赤青黄色が生えまくったゴダール流フランスコントラスト.ブリジットバルドーとミシェルピコリのファッションセンスなどなどマジで額縁に入れて飾りたくなる美ショットが満載すぎだろ。そしてワイドスクリーンの横長さが際立ち、意外にも劇場案件な感じも◎。個人的にゴダールはアンナカリーナよりもあんま出演してないジーンセバーグやマーシャメリルが好きだったりするのだが、今作のブリジットバルドーのムスッとした表情がマジでかっこよすぎて逆に惚れちゃうのも素晴らしいね。
いやしかしなんちゅう"軽蔑"の意味のダブルミーニングさよ、夫に対する軽蔑はもちろんなんだがわりかししっかり映画製作に対する軽蔑を表明しちゃうゴダールの力強さ。"8 1/2"でもそういう要素はあったがこっちはがっつりセリフで言っちゃうあたりしっかり風刺。フリッツラングが出演してるメタ要素もしっかりあったし実はめちゃくちゃ風刺が効いてるのもゴダールっぽくて好き。
それと終わり方含め夫婦喧嘩話はスコセッシが好きそうだなっていう印象、ラストショットの海の青は"気狂いピエロ"とまた違って美しすぎた。いや意外に見やすくもあるし、ゴダール的な変なことやってない作品でもあるし実はゴダール初心者にはいいんじゃなかろうか。まあなんだかんだいっても最高すぎる"軽蔑"体験、これは是非劇場で見たほうがいいと思いましたねぇ。
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