おざわさん

眠りの地のおざわさんのレビュー・感想・評価

眠りの地(2023年製作の映画)
4.1
地域密着な葬儀屋さんが資金繰りに困り、カナダ資本の大手葬儀グループに一部売却を求めたけれど、焦らされて叩かれた事で訴訟を起こした、実話を元にしたストーリー

正直、「眠りの地」という邦題は葬儀業界だからという安直なものかと思えば、原題の「Burial(=埋葬)」よりもこの件については相応しいと思える稀有な作品でした

祖父の代からの家業を継ぎ、地域密着な葬儀業と葬儀に関する保険業を営んでいたオキーフが、その祖父の代からの負債によって業務停止になりかかって、そんな窮地を見計らったカナダ資本の大手葬儀会社に買い叩かれようとしていました

そんな法廷で巨悪を叩こうとしたウィリアム弁護士と、バーバード大主席卒な若手のホープなダウンズ弁護士が互いのプライドを賭けて争った法廷ドラマです

初めは企業契約には詳しくなかったウィリアムでしたが、弁護士成り立てのハルに「超一流になれるチャンス」と唆されて請け負ったものの、一度は敗れて担当を下される

でもオキーフの人柄と自らのミスを認めたところから、本当の反撃は始まります

この法廷は白人の企業同士が告発するという訴訟を、黒人弁護士同士が争うという構図なのに、その争点に差別問題を絡めているというアンバランスさ

初めは功名心ばかりのウィリアムでしたが、その訴訟の本質に気づく内に、自らの尊厳さえ賭けて戦うようになります

オキーフたちが訴訟を起こしたのは黒人が多い地域だというのも、陪審員の心情を引き寄せるのが裁判の結果を左右すると思われるからでしたが、そこから更に深い歴史的な問題にぶち当たる

次第にこの問題の本質が明らかになっていくことで、黒人奴隷たちが置かれていた立場と変わらない現実を描き出していきます。
先祖たちの眠る地から想いをあぶり出していくストーリーが、このタイトルに繋がっていると感じ入りました

何より2人の終生にもわたる友情の物語が、胸を打ちます