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華岡青洲の妻のSPNminacoのレビュー・感想・評価

華岡青洲の妻(1967年製作の映画)
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女2男1の関係は女同士を見るためにある。とはいえ、ハナから男は眼中になし。祝言でも夫の顔は見えず、市川雷蔵が登場するのはずっと後だった。出会った瞬間、姑となる於継に加恵の目は釘付け。時に襖の奥から冷ややかな視線で、時に思慕の眼差しで、女の目は常に女を見ている。
犠牲となるのも女である。麻酔薬の実験台となった嫁姑だけでなく、加恵の娘や病に倒れた義姉妹も患者もみな家父長制の犠牲者だ。夫雲平が戻るまで嫁姑には密やかな連帯があったのに、於継はあっさり加恵を見捨て家の道具として扱う。夫に対して特に何の感情もなかった加恵は、自分を裏切った姑を床に並んだ枕でじっと見つめる。
タイトルの出るタイミングからして不穏だし、白無垢と葬儀の白装束とマンダラゲの白い花は不吉なイメージとして同列だ。実験台になる以前に結婚によってその身を差し出したも同然。出産と死も同じような苦痛を伴う。義姉の言葉が全部言い表してた通り、横着した男が「動くほどきつく締まる結び目」で女を縛っているから。その家紋を誇らしげに見せられた加恵の反応よ。雲平は乳がん患者を救っても、女だけが罹る別の病には気付かぬまま。
献身的美談でなく、ましてや女同士の争いでもない。家父長制の恐ろしさが詰まってた。高峰秀子と若尾文子、杉村春子のナレーションもまた冷え冷えさせる。あと、猫にとっても恐ろしい映画。「この映画で動物は傷つけていません」のテロップがあればいいのに…!
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