不在

アタラント号の不在のレビュー・感想・評価

アタラント号(1934年製作の映画)
4.0
本作で最後に辿り着く、ル・アーヴルという港町。
ここはクロード・モネの作品の舞台にもなっている。
印象派という名前はこの町の絵が由来だ。

港町とは川の終わりであり、海の始まりとも言える。
そして川とは大小様々な水の流れの事で、それらがやがて一つに集まり、海になる。
港や海、川がこれまで多くの芸術作品の題材に選ばれ、時には人の人生にまで例えられてきたのは、この性質のおかげだろう。
前述したモネの描いた『印象・日の出』も、朝日が昇る中、人々が船を漕いでいるというまさに人生の始まりを予感させるものとなっている。

男のロマンやプライドというものは、常に誰かの犠牲によって成り立っていた。
そのような男尊女卑の言葉が、最近になってやっと自虐的な響きを帯びてきている。
本作はシンプルながらも示唆に富んだ脚本や、想像を掻き立てる撮影など、この時代においても目を見張るものがあるのは確かだが、色々な意味でこのような映画が作られることは二度とないだろう。
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