今更ながら初めてジャン・ヴィゴを見たが、凄い映画だった。確かに凄い映画だったのだが、本当に凄い映画は見終わったあと何が凄かったのか言葉にするのが難しい。別に物語が面白いわけでもないし、物語に感動するわけでもない。
ただ、いろいろなものたちが奇妙にひしめき合って無気味に動き出している感じがたまらなく良い。子猫たち、変な人形、蓄音機、ごちゃごちゃした部屋、ホルマリン漬けされた手……。カメラマンのボリス・カウフマンはジガ・ヴェルトフの異母弟らしい。確かに『カメラを持った男』的なごちゃごちゃ感があった。