sonozy

世界の終わりにはあまり期待しないでのsonozyのレビュー・感想・評価

4.5
ルーマニアのラドゥ・ジューデ監督の痛烈なブラックコメディ。
非常にユニークで面白い!

主人公のアンジェラは、映像制作会社のAD(アシスタントディレクター)で、オーストリアの多国籍企業から受注した、社内向けの安全啓発ビデオに出演する労災の被害者を選出するため、派手なラメのワンピを着て車であちこち移動しながら候補者の動画をiPhoneで撮影し、1日16〜17時間働きずめだが収入は不定期な搾取された労働者。眠気覚ましに大きめの音で音楽を流しながらマニュアル車を運転するストレスMAXな彼女を助手席からのカメラで捉える映像が多めの白黒映像。

彼女は、仕事の合間にInstagram/TikTokのフィルターで顔をハゲ&ヒゲの有毒男に変えたボビタという名の分身となり、日々のストレスを吐き出すかのように、世の中への不満やヘイトをぶちまけるショート動画を撮影&投稿している。(このシーンはカラー映像)
※彼女の分身ボビタは、数々の女性蔑視発言で知られ、活動家グレタ・トゥーンベリとツイートの応酬をした直後にルーマニアで逮捕されたアンドリュー・テイト Andrew Tateを模したフィルター。

冒頭から、1982年の『Angela Moves On』という、同じアンジェラという名の女性タクシードライバーが主演のルーマニア映画を引用しながら(カラー映像)、それに出演していた主役の女性と恋人役の男性がメインストーリーにも登場するというユニークな構成で展開。

最後は候補者の中から選ばれた男性と家族を撮影するパート(カラー)に。
諸々の対応でなかなか進まない撮影とカメラの外で交わされる会話が面白いですが、何度かリハするものの小雨も降り出す中、なかなか進まない撮影を待たされる家族。
結局はオーストリアからの指示で、ボブ・ディランの♪「Subterranean Homesick Blues」のビデオ(歌詞の書き込まれたキューカードをディランが放り投げていく映像)のようにやれという指示を受け、無言で緑色の白紙をめくるだけ(発言内容はあとで合成)という酷い展開に。笑;

イリンカ・マノラーチェ演じるアンジェラも分身の有毒男ボビタもパンクで最高。ただ、ボビタ≒アンドリュー・テイトがプーチン信奉者らしく、不快な発言も出てきますが。

手描きのエンドロールの中に、日本の俳句が5つも登場。監督、俳句好きなんでしょうか。
※以下のようですが、最初と最後以外は知らず...汗;
●世の中は 地獄の上の 花見かな(小林一茶)
●鋸の 音貧しさよ 夜半の冬(与謝蕪村)
●きみ火をたけ よき物見せん 雪まろげ(松尾芭蕉)
●隅の蜘蛛 案じな煤は とらぬぞよ(小林一茶)
●夏草や 兵どもが 夢の跡(松尾芭蕉)

トレーラー(MUBI)
https://youtu.be/w0uh5i-SEW8
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