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Hereのmknsのネタバレレビュー・内容・結末

Here(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

工事現場のビル、囲むように木の茂み、数秒後に鳥が左端から一羽飛び出す
あまりにも完璧に構成された画面に開始5分ぐらいで圧倒されて息が詰まった
息が詰まるというのはそのものとして完成されすぎて隙がない状態、ある程度距離を保つ必要があるポジティブな感覚
写真と映像の間、静止画の中に1点動きがあるので不思議な違和感

〈印象的な場面〉
・閉店後のレストランで友人と会う
横長のカウンターに椅子3脚、隔てて等間隔に2人 
・「ここが俺の家だ」のショット
背景の家たちが妙に平面的、主人公のシルエットと相まって絵本のよう、なのに現実を確かめるように呟く言葉との対比
・ゴミを捨てに行く
構成全てが計算され尽くされており眩暈がする 主人公が出てきて止まるまで、その場所以外正解はないという程
・虫を捕まえる
左から歩いてくる→茂みの中の光に気づく→潜る→数秒経つ→出てくる→手の内をズーム 一連の動作は何気ないものであるのにずっと目を離せなかった

個人的画面構成が美しい映画として相米慎二の「お引越し」、キアロスタミの「友だちのうちはどこ?」、最近だとライカートの「first cow」があるけれど、この作品は特にその比重が強いように感じた(ここら辺をQ&Aで質問したかったが、時間がなく残念)

工場から始まり、最後は苔にまだ辿りつく
どんどん視点がミクロになるのにシームレスに繋がる視点が面白い
リウの言語に対する考え方も良かった
中国語と英語の覚え方は違い、それによって理解の仕方も異なるという話
バイリンガルであるが故、常に様々な言語に溺れている(だから私の色は緑である)

歩きのシーンについて、監督の答えがとても良かったのでメモしたもの↓
人に出会うことによって不思議に触ることができる あまり知らない人に対して話しかけるのか(興味がアクションに繋がるところはどこなのか?)
出会うためには歩く、歩く事で止まる、止まるためには外に出なければならない

音・光・色の印象が物語と同じように(時にはそれ以上に)入ってくる 監督が映画の要素に優劣があるわけではなく、その為に全てフラットに表現したかったと言っていて納得
ベルギーで撮られているのに何故かずっとエグルストンの写真が頭に浮かび、それは青とオレンジの彩度が高く、ヨーロッパ映画の印象にある淡い緑色とは微妙に違うそれだからなのかもしれない

あと個人的に映像によって強制的に避けられている字幕がとても好き(最近のお気に入りはザファのドデカ流川に寄り添う字幕)なのだが、苔を一心不乱に見つめる主人公の隣に居心地悪く収まっているものを見つけ、大変ニッコリ
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