音響や構図、ライティングに私たちの日常の延長とも言える様な捻りを捨てたストーリー。
映像作品の持つ全ての力を最大限活用してこちら側へ歩み寄ってくれる様な作品。
上映後のあの感覚をこの先忘れられないと思う。
同時上映で前作の『Ghost Tropic』を先日鑑賞してその構図や長回しへの美学に痛く感動してしまったのだけれど、今作ではその二点が進化を遂げつつ、それに加えてライティングが飛躍していた様に思う。
特に夜、雨が降っているシーンは『Ghost Tropic』と比較出来るが、全体的な質感が私たちの見る現実と非常に近づいている感覚があった。映画らしさと現実のバランスを取ることは非常に難しいと思う。ただそれを美しいと思えたということが現実への希望の一つだった。
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冒頭の必要以上までの長回しで自分がベルギーにいるかと錯覚するほど、強制的にその場所に入り込まされる。
登場人物がバスに乗っているシーン一つとっても、アラブ系・アフリカ系・アジア系と移民溢れるこの場所が当然という様に一つの構図に複数の人種が収まる。
映画とオーディエンスの同期を序盤にしっかりと済ませるからこそ、最終的にここまで入り込むことが出来た。
映像としての暖かさ、人物の機微としての暖かさ。多くのぬくみがこの映画に内包されている。
だからこそ上映後、私はこんなに落ち着いた気持ちで居たのだろう、と思う。
