バス・ドゥヴォス監督の作品を観たのはこれが初めてなんだけど、凄く良かったな・・。正直自分とは相性が悪い作風だし実際少し眠気に襲われたけど、最後には言いようの無い感慨に包まれた。
祖国に帰る前に冷蔵庫を空にしようとスープを作って友人知人に配っている移民の男性が、苔の研究をしている女性学者と出会う。日常からほんの少し外れた所にあるささやかな非日常の物語を通して描かれる、街と人・人と人との繋がり。物語の着眼点がとっても素敵だし、ゆったりとしたペースでそれぞれの繋がりを見つめる監督の視点も美しい。
美しい画もさる事ながら、劇場の暗闇で観客を包み込むような音響が圧倒的でもう感嘆するばかり。特に個人的に印象深かったのが、森の中を歩く主役2人のすぐ近くを電車が通るのにその電車の音はせず静かな木々の揺れる音だけが響いている終盤のある瞬間。主観的な音の使い方にハッとした。
ラストシーンでは、暖かく優しい感覚がふわりと溢れ出す。同じ日に見た同監督の「ゴースト・トロピック」も合わせて、不思議で豊かな後味が残ったな。
