ポレポレ

Hereのポレポレのレビュー・感想・評価

Here(2023年製作の映画)
3.1
ヴァカンスを機にルーマニアへ帰国するか悩んでいる建設労働者シュテファン(Stefan Gota)の、出発までの日常を描く。

時間や場所によって彩度も明度も異なる木々や苔の緑色🟢の美しいこと! 葉が戦ぐ音、鳥や虫の鳴き声も漏らさない映像は微睡んでしまうほど心地よい。

今いる「ここ」に留まれる植物と、留まれない(かもしれない)移民のシュテファンの対比が言葉少なに描かれているように思う。冷蔵庫の中を空にするために彼が作ったスープや、いつの間にか彼のポケットに入っていた植物の種は、帰国するか否か揺れている心情の表れか?

「ここ」=ブリュッセルを去るかもしれないシュテファンが纏うどこかネガティヴな空気は、森でシュシュ(Liyo Gong)と再会してから徐々に和らいでいく。一度レストランで会ったきりで互いの素性も知らない2人が過ごす時間は、観ているこちらも温かく清々しい気分になれる。蘚苔学者のシュシュが語る「苔に注目する人は少ないが、実は生命力に溢れた小さな森だ」は、苔と同じくありふれた存在となった移民たちと、その移民によって支えられている現代のブリュッセルやベルギーを指していたりして?

夜中の散歩でシュテファンが見つけた緑色の発光物は何だったのだろう? 彼が「ここ」に留まるか否かの悩みや決断の暗喩だろうか?

……ところで、自分が見た夢についてのシュシュの独白が流れる場面で眠気に襲われるのは私だけなのだろうか? 前日に充分に睡眠をとり、朝一番に鑑賞したら完璧かも。
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