傑作だと思う。
観ている間、ずっとヒリヒリした感覚が続く映画だった。
社会派ドラマとして、メッセージ性に富んだ作品だったが、ストーリーテリングや演出も見事。
冒頭のドローン撮影から団地とその外に広がる広い世界を見せておきながら、その後に続くカットはひたすら窮屈なフレーミングばかり。さらに続く棺桶を持って階段を降りていくシーンではひたすらに前も後ろも見えない窮屈で得体の知れない場所を進んでいくような感覚を体感させられる。ここで暮らす人々の窮屈さ、未来への不安などがこういったところからヒシヒシと感じられ、見事な作劇だと思った。
市長の家族にまで暴力が及ぶのが非常にショッキングだったが、どこかでそれを望んでいるような感覚も芽生えてしまったことに私自身が動揺してしまった。
『レ・ミゼラブル』の時から才能のある監督なんだろうなぁと感じていたが、今回より一層演出が深化しているように感じた。
物語の結末も、個人的には前作より希望を感じられた。
前作は暴動の火蓋が切られる瞬間を目撃したような感覚があったが、今回はその火蓋を切らないという選択を取っており、また、それを主導しているのが女性というのも、考えさせられる。
どちらの結末がいいというわけではなく、どちらも現代にとって必要なメッセージだと思う。
監督自身がQ&Aで三部作を構想していると仰っていたので、もう次の作品が楽しみになった。
クレール・ドゥニが2つ席を挟んで隣に座っていて、マジでビビった。
大尊敬してますと念だけ送っておいた。