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恋恋風塵(れんれんふうじん)の帽子のレビュー・感想・評価

4.7
蓮實重彦が、この映画の冒頭の列車が
リュミエール兄弟の列車みたいだと書いていたがまさにその通りだ。この映画は侯孝賢の映画史上最も鉄道モチーフが大量に出てくる。暗闇を疾走する列車、開けた駅のホーム、閑散とした改札口、二人の少年少女が歩く線路。
この時代設定の主流な交通手段がどんなものだったのか詳しくはわからないが、1990年代から2000年代の侯孝賢作品になると自動車とオートバイのショットがやけに多くなってくる。
だからこそ、列車がここまで画面に力を持って登場する『恋恋風塵』には心奪われてしまう。
『風櫃の少年』とほぼ同年代に製作されたことも要因の一つだろうけれど、似たようなショットがいくつも登場している。
設定も類似点が多い。
『恋恋風塵』冒頭主人公の「映画だ。」の台詞と風にたなびくスクリーンと『風櫃の少年』で騙された主人公たちが見るスクリーンサイズに切り取られた廃墟の外壁からの風景は、映画の中の映画スクリーンというメタ的な視点が類似している。
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