南森まち

恋恋風塵(れんれんふうじん)の南森まちのレビュー・感想・評価

3.1
1960年代の台湾の山村に住む若いカップル。少年は優秀だったが家が貧しいため高校には通わず、台北に出稼ぎにいき夜学に通う。そして後日、少女も台北に来て慣れない都会で支えながら実家に仕送りして暮らす。しかしある日、少年に兵役の連絡が届く…というお話。
プレミア化してなかなか見られない『非情城市』の候孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品。

極力セリフや説明を減らすことで、リアリティーを感じさせる恋愛映画。
現代映画のようなドラマチックな恋愛劇ではなく、どこにでもいそうな恋人たちの顛末を淡々と描く。観客が自分の初恋と重ねて見てしまうようなほろ苦い映画で、そこには奇跡は起こらない。
英語のタイトルは”Dust in the Wind”、「(吹けば飛ぶような)はかないもの」。

鉱山だった山村の情景が美しい。また、出ずっぱりの主演・王晶文(ワン・ジンウェン)の演技が素晴らしい。映画であることを忘れさせるくらい巧い。また、主演女優の辛樹芬(シン・シューフェン)がめちゃくちゃ美人で一人浮いてる🤣

王晶文はスポーツ記者に転身したが2014年心筋梗塞で亡くなり、辛樹芬は『非情城市』出演後は連絡が取れず、2009年の同映画20周年の際も見つけられなかったとのこと。(Wikipediaより)

日本から見ると、兵役出発前夜のお父さんとの対話が染みる。
「うちの家系は勉学に恵まれないな…俺は小学校を卒業した途端終戦だ。『あ・い・う・え・お』から『ボ・ポ・モ・フォ』。最初からやり直しだ。…飲めよ。」
その直後、お父さんが「武(タケ)!」と知り合いに呼ばれる。
訓読みだから台湾が日本だったころに名付けられた名前だってことなんだろうな…。