豚肉丸

Be My Cat: A Film for Anne(原題)の豚肉丸のレビュー・感想・評価

4.5
アン・ハサウェイにガチ恋するルーマニア在住のオタクがアン・ハサウェイに出演してもらうために彼女に送り付けるためのパイロットフィルムを撮影するも、その撮影は次第に狂気を帯び始め...というお話

フォロワーさんが絶賛していたのが気になり鑑賞。自主制作低予算のファウンド・フッテージがそんなに面白いのか?と期待値低く見始めたのだが、その「自主制作低予算のファウンド・フッテージ」を逆手にとったアイデアで見事に仕上げていて驚いた。いやこれは凄い...

アン・ハサウェイに送り付けるパイロットフィルムを撮影するために女優を呼び出し、演じてもらうというのが本作の主な内容。しかし本作の主人公はかなり自己中心的で自分自身に絶対的な自信を持った厄介な性格を持っているため、序盤から全く上手く映画撮影は進まない。
何てことの無い説明的なショットすら「カメラに近すぎる」(自分から女優に接近している)などの理不尽な理由で何回もやり直させ、挙句の果てには「自分の頭で考えろ」と突き放す。これが序盤10分の内容で、早速ストレスしか溜まらない内容に見ていてイライラが募るのだが、最後までずっとこんな調子なので感想を書いている今ですら主人公へのイライラが収まっていない。

しかし本作の内容はイライラネチネチ映画撮影ではなくスリラー映画なのだが、そのスリラー展開に移行する流れがあまりにも綺麗すぎて驚いた。そこから先の内容はあまり語らないようにしておくが、前述した主人公に対するイライラも低予算ファウンド・フッテージも何もかもを全て映画の面白さに直結させているのだ。それが本当に凄い。
似たような作品で言えば『コリアタウン殺人事件』か。あの映画のように、本作もまた現実と虚構が入り交じった内容で、映画の作りすら現実と虚構を織り交ぜている(登場人物全員本名、主人公は監督が演じているなど)作りからなのか、リアリティと映像に纏う不穏と狂気の雰囲気が素晴らしい。本作を見ている観客すら映画の中に取り込んでくる演出がまた良い。

ファウンド・フッテージ映画の中では上位に入るレベルで凄い。『コリアタウン殺人事件』が好きな人やメタフィクションが好きな人には滅茶苦茶オススメ。面白かった!
豚肉丸

豚肉丸