カカポ

リンダはチキンがたべたい!のカカポのレビュー・感想・評価

3.0
材料も味付けもなんなら名前すらも知らない海外の家庭料理を食べてるみたいな気持ちになる作品。へ〜この味付け知らないな〜日本では絶対食べれないな〜とは思うけど、正直これが美味しいのか美味しくないのかはよく分からん……みたいな感じ。やっぱりアニメーションの小品が一番各国の文化の違いが感じられて面白いな〜!

亡くなったお父さんの思い出の味である「パプリカチキン」を食べたいとリンダがお母さんにおねだりするところから、どんどん話が広がっていって最終的には2人が暮らす団地全体を巻き込んで大騒動!というお話なんですが、登場人物がみんな割とワガママで奔放で人間味を感じる造形でヨーロッパぽいなと思った。リンダも子供だけどそれ以前にリンダという個人だし、ママも大人だけどそれ以前にポレットという個人なんだよな〜。
登場人物が異なる単色で塗られたカラフルなビジュアルや、チョークで描かれたようなシンプルな線で構成されるアニメーションもヨーロッパ圏のコミック的な雰囲気を感じさせる。

「パパが死んじゃった」ってことはママから聞いて知ってるけど、赤ちゃんだったリンダには直接その記憶はないから「本当にパパって存在したの?」みたいに考えちゃう気持ちもわかるし、だけどパパが作ってくれた「パプリカチキン」のことは覚えてるっていうのもなんか分かるな〜と思った。人間の存在って実存だけで成り立ってるのではなくて、他者との記憶や思い出や関係性やそういう周縁によって形作られてるものだし、それがリンダにとってはパパの「パプリカチキン」なんだよな。
その「パプリカチキン」をドタバタしながらみんなで作って最後に団地のみんなと食べたことで、リンダをはじめその場に参加した人たちが各々に新しい他者の輪郭を発見する機会になったという終わり方も好きだった。
ニワトリを締めた経験も、みんなで木に洋服を投げたことも、お巡りさんが鉄砲を打ったことも、みんないつかの誰かのことを思い出すための記憶になるんだな〜

という感じで作品に込められた想いは割と好きなんだけど、途中のドタバタのシーンで各個人がやることが「そ、それはオチャメの範囲では庇いきれないのでは……??」と思ってしまうような感じで引いてしまった それも含めておもろいといえばおもろいですが…笑
カカポ

カカポ