蛙

リンダはチキンがたべたい!の蛙のレビュー・感想・評価

3.5
親として、大人としての息苦しさと愚かしさ。生き生きとした子供の無邪気さと無責任さ。

シンプルで抽象的なアニメーションの絵柄、有機的にフワフワと揺れ動く輪郭は、ピクサーや日本アニメの緻密さに慣れきった中で観ると、逆に豊かな表現に感じます。高畑監督の『かぐや姫の物語』や、昨年の『ミュータント・タートルズ』に感じる雄弁さ、豊かさに似ていると思います。
同時に、この不明確さは子供時代の思い出をも刺激されるなと思います。

物語の中に、功と罪がフラットに内包されているのも特徴的。
父/夫を亡くした母娘ポエットとリンダ。前半は主に大人、母ポエットの視点。社会性と規範は保っているが悲哀と苛立ちの中から抜け出せない。後半の娘リンダの視点では無邪気な躍動感を全開に、母ポエットと共に進むけれど、理不尽とも言える無責任さを他人に押し付ける。(頑張れアストリッド😭)
そんな物事の善とも悪とも取れる多面性が細かい所にも描かれていて、例えばフランス革命の残酷な一面、労働者の権利であるストライキから来る不便さ、クライマックスの多様性を表す彩り豊かなデコレーションも目的は達していないとも読み取れます。

無邪気に見える、鮮やかで抽象的タッチの奥に、シニカルでビターな物の見方を感じる作品でした。個人的にはもう一歩、カタルシス/マジックがあるとより良かったと思いますが、鑑賞後の左脳を刺激される感じは、嫌いじゃないです。
蛙