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母なる勇気のakiakaneのレビュー・感想・評価

母なる勇気(1998年製作の映画)
3.0
「ペルー映画祭vol.2」にて。失業、インフレ、飢餓が蔓延る経済危機の中、独自の革命理論に従わない住民の殺害や施設の爆破を繰り返す極左テロ組織「センデロ・ルミノソ」に脅迫と悪評の流布などの妨害を受け続けながらも、内戦時代のペルーのリマ市南部の貧困地区、ビジャ・エルサルバドルで活動した市民活動家女性、マリア・エレナ・モヤが33歳で暗殺された晩年を描く。
マリアはテロ組織に対する不屈と暴力への抗議を示す街頭での行進、女性連盟の代表として地域の女性たちと共同食堂の運営、約束通りに米が支給されなければ大臣に直談判しに行き、1987年に受賞したスペインのアストゥリアス皇太子賞平和部門の賞金でミシンを購入して女性たちの自立支援のための裁縫教室を始める。
暴力や破壊ではなく生活改善による革命を、市井の女性たちの団結によって目指した彼女の功績を残した貴重な一作。

《余談》
既にマリアがビジャ・エルサルバドル市長を経験し、市民活動もかなり行った後の一時期を描いていただけでは内容が少なすぎる。また、前半が皆に慕われる市民活動家の姿、後半がセンデロからの妨害と脅迫に伴う逃亡、家族や女性連盟とのやりとりが中心になり、前半はトントン拍子に物事が進み過ぎ、反対に後半は停滞し過ぎてテンポが悪い印象を受けた。
怪しすぎる人物の複数回にわたる登場や、夫婦のラブシーン、長尺な他国への避難生活を入れるくらいなら、もっと彼女と当時の背景描写に時間を割いてほしかった。
マリアという人物の考えや生い立ち、ビジャ・エルサルバドル地区の成り立ちと当時の状況、テロ組織センデロ・ルミノソが生まれ拡大した背景、暗殺後に彼女の死を悼む人ばかりではなかった社会の残酷さ、遺された家族の亡命など、もっと描くべき内容があったはず。

(字幕翻訳:新谷和輝)
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