氷雨水葵

インファナル・アフェアII 無間序曲 4Kの氷雨水葵のレビュー・感想・評価

5.0
2023年109本目

前日譚なくしては

◆あらすじ
1990年代、中国返還を前に揺れ動く香港。

警察学校へ送り込まれたマフィアの青年ラウ(エディソン・チャン)と、身内に犯罪者が発覚し警察学校を退学処分となった青年ヤン(ショーン・ユー)。

2人の秘められた過去と彼らを取り巻く人々の物語が明かされる―――。

◆感想
1作目に続きこちらも鑑賞!あああああ『インファナル・アフェア』は1作目だけじゃなく2作目も至高ッッ。この前日譚があってこそ1作目、3作目がきらりと輝く。

本作の何が良いって、まず始まって1~2分ほどで「善人が死に、悪人が生き残る」という、シリーズの無情なテーマがわかる。加えて、話が進んでいくうち、かたや自分のせいで親友を失い、かたや良い人に見えた男でさえ「邪魔する者は殺す」スタンスの巨悪になるという皮肉っぷり。さらに、1作目を彷彿とさせるオーディオシーンは必見。サムの女がマリーという名前なのも、運命というものなのかな。いや逆か。将来ラウが結婚する相手がマリーなのが、ある意味運命ってことなのかな…。所々に1作目を補完するシーンがあるのが本作の見どころですね。

2作目を観ると、運命を入れ替えられた2人の生き様に余計に涙が出る。身内に犯罪者がいるという理由で、退学(書類上)を言い渡されたときヤン(ショーン・ユー)が涙を流すのですが、このワンシーンだけでヤンが本当に警官になりたかったのが伝わってくる。

初見当時、衝撃的だったシーンはウォンとマリーが教唆関係だったことかな。その結果、どちらもが悲しい運命をたどることになるんですよね。原題というか、シリーズのひとつのテーマである「無間地獄」がより深くなっていくことがわかるシーンでした。こういう映画ではお約束だけど、ルク刑事があんな形で退場したのはマジで辛かった…。「因果応報。この先どうなるかわからん」と序盤にサムが言ったとおり、因果と応報の物語ですね1作目と2作目は。
ラウとマリーの物語が合間にあるのも良い。明らかにラウが惚れているのがわかるし、それによってマリーに拒絶されたときのラウの心情もぐいぐい伝わってくる。ラウにとっては愛を知るのと同時に、マリーという十字架を背負う瞬間でしたね。マリーがラウの電話に出ていたら、ラウを受け入れていたら、なにか変わっていたのかな。実際若いんだろうけど、ヤン…というかエディソン・チャンの女を知らない純粋な青年の演技が好き。とくに惚れてるとか言ってないのに、ラウのマリーを見る目つき(いやらしくない)や表情、雰囲気が素晴らしいと思います。

終盤、ルク警視の墓参りに来た若きヤンの雰囲気が、もうトニー・レオン演じる10年後の姿まんまでちょっと感動。黒い革ジャンっていうのもあるけど、言葉選びとか所作(?)がそう見えるのかも。てか、ショーン・ユーかっこいいな(今更)!?ウォンとのこういう何気ない会話が1作目、3作目に続くと思うと胸が痛い。人間模様あり、確執あり、愛のドラマありな前日譚でした。
氷雨水葵

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