ひろ

勝手にしやがれのひろのレビュー・感想・評価

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)
4.0
ジャン=リュック・ゴダール製作・監督・脚本によって製作された1959年のフランス映画

ジャン=リュック・ゴダール監督の長編デビュー作にして、ヌーヴェルヴァーグを代表する傑作。1959年はヌーヴェルヴァーグを代表する作品だらけなので、“ヌーヴェルヴァーグ元年”と呼ばれている。批評家だった監督たちが、映画の在り方に革命を起こそうとしたエネルギーを感じる作品だ。

フランソワ・トリュフォーのオリジナルシナリオを、ゴダールが脚色した作品なんだけど、無軌道に人生を突き進む若者が、愛に翻弄されながら破滅していく展開は面白い。ゴダールらしい哲学的な台詞も印象的だし、ヌーヴェルヴァーグらしい即興演出、ロケ撮影、同時録音なども、作品の雰囲気を出している。

ゴダールがすごいのは、即興演出が役者のアドリブでなく、アドリブに見える演出だということ。たまたま撮れたように見える映像すら計算されているのだ。そして、ゴダールの代名詞であるジャンプカットが素晴らしい。この作品で初めて使われた技術で、多くの後人が真似している。シーンの繋がりを無視して編集する技術で、違和感を感じるかもしれないが斬新で面白い。間になにが起きたかは、観る側が想像すればいいのだ。

この映画をきっかけにスターになったジャン=ポール・ベルモンド。最低な伊達男キャラだが、ハンフリー・ボガートを意識した煙草の吸い方なんかもかっこいい。ヒロインのパトリシアを演じたジーン・セバーグは、「セシルカット」と言われ流行したというベリーショートが可愛らしい。

ヌーヴェルヴァーグの盟友たちも出演しているし、監督も出演している。ヌーヴェルヴァーグの解答は「勝手にしやがれ」と言ってもいいはずだ。そのヌーヴェルヴァーグへの解答としてアメリカで生まれたのが、アメリカン・ニューシネマなのかもしれない。映画を評価する時は、その歴史的な価値も考慮しなくてはならない。この作品は間違いなく歴史的な作品だ。観ないという選択はありえない。
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