ten

メイド・イン・ホンコン/香港製造 デジタル・リマスター版のtenのレビュー・感想・評価

3.0
この監督の作品は本当に気持ち悪いくらい生々しい。非日常のできごとが目まぐるしく起きるその熱量に東アジアの空気を感じつつ、観客を置いてけぼりにするような不自然なテンポに数歩引いて観てしまうのは、フルーツチャンの意図にはまっているのかそうでないのか。どちらにせよ不思議なのは、その距離感があってなお、ベタつく汗やむせかえる血の匂い、彼らの生活臭が生々しく立ち現れること。この感覚がひどく眩暈に似ているために嫌悪感さえ引き出してくる、だから「ハリウッド香港」は苦手だった。数年ぶり、私のフルーツチャン2作目である本作はいくらか眩暈が軽くはあった。彼のテンポはどうにも肌に合わないけれど、生々しい空気の魔術的なまでの操りはなぜだか病みつきになる。
ten

ten