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わたくしどもは。のVisorRobotのネタバレレビュー・内容・結末

わたくしどもは。(2023年製作の映画)
2.1

このレビューはネタバレを含みます

アミューズメント佐渡で見た。監督・プロデューサーのトーク付きだった。帰省ついでに見たのだ。監督は「佐渡の人々の感謝している」という旨の話をたびたび語り、お二人とも上品かつ謙虚で非常に好感を持った。そのうえで映画を見て、思った。

全然、おもしろくねえ!

そもそもこの映画の成り立ちからして非常に特殊であることは、企画・製作・配給を夫婦でもある監督・プロデューサーの名前から命名したTETSUYAtoMINAfilmが行っていることからも明らかである。それで小松菜奈、松田龍平、石橋静河、大竹しのぶ、と今を時めく人気俳優をツモって、音楽にはradwimpsの野田洋次郎を引っ張ってきているのである。

明らかに、畠中美奈(プロデューサー)がえげつないやり手なのだ。(株)久米設計出身。UWFの広報をつとめる。松田優作事務所(オフィス作)とは映画以前から仕事をしていたということなのでそのあたりのつながりは察しが付くが、それにしてもどういう人脈なのか。。。

さて、そんな美奈が惚れ込んで本作の監督・脚本・編集を手掛ける富名哲也監督はロンドン・フィルム・スクール出身。本作は長編二作目で、前作も佐渡が舞台である。

確かに、映像を撮るという点に関しては、しっかりとした素地があるんだろうなあと思う。ポートレートのように人物に焦点を合わせた映像は見ていて心地いし、画面にインディーズっぽい安っぽさがない。新潟交通のバスを横からとらえた石橋静河のシーンなんかよかった。

一方、話ははっきり言ってぼんやりしている。心中した二人が死後の世界でさまよい、そこに自らのジェンダーに対する差別に悩んで自死を選ぶ少年やら田中泯演ずる館長の踊りやらが差し込まれるのだが、「なるほどこういうのを雰囲気映画というんだろうなあ」という感情の動かなさ、味気無さ。適当に現代的なテーマや芸術的な目配せを差し込んできた、という感じでもなく、爛れた男やら警備人やら背景の設定もそれなりにしっかり練りこまれているのだろうが、でも、何が描きたいのかと言ったら「雰囲気」だったのだと思う。

登場人物がみんなあの世の人なので、生者であるわれわれと問題意識が通じておらず、誰の視点で見ていいのかわからない。だからこそ、「わたくしどもは」なんだろうな。

でも絶対、「こちら側」目線もあった方が良いと思う。

向田透(女の子になりたい少年)をいじめる集団がなぜか全員手話(母も手話)で話していた(向田は声を発する)ことも含め、こちら側とそちら側を逆転させる試み自体が意図に沿ったものなんだろうけど、、。なんかその試み自体が観客不在、というか──その試みではっとできる「観客」のみをターゲットにした狭いものになってしまっているように思う。

奥歯にものが挟まったような言い方になってしまったが、要するにつまらなかった。
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