指

曖昧な楽園の指のレビュー・感想・評価

曖昧な楽園(2023年製作の映画)
4.7
本当に心に残る映画でした。
寂しさと居心地の良さを感じて見終わった余韻に浸っています。
台詞が限られている作品であるけど登場人物の人生や背景にはきっと色んな言葉や言葉にならない感情が存在してるように見えました。
きっともうすぐ動かなくなる身体。
呼んでも来ない息子をきっとギリギリまで待ったのかな。
別のシーンで大人用おむつが見えたとき苦しかったです。
おもちゃや折り紙、童謡など、
死に向かうのは子供に戻るようでもある。
母の孤独も子の孤独もあり、
デリヘル嬢の頭を撫でる描写やスマホからの声が余計に虚しくなる。
静と動の表現。
車が通ってないときにも鳴り続ける
カチカチ。(このときのパン、長いこと車通らないの狙えたの凄いよね、、)
水の描写が印象的でツァイミンリャイを彷彿させられました。
建物の捉え方や乗り物の捉え方も
印象に残る。
綺麗に置きすぎないカメラ画角。
乗り物に乗りながら窓ガラスに反射する自分の姿の捉えようの無さ。
若者と花火。
土と同化して見える衣装。
肉体から離れ自由に動くおじいさん。
湖の側で並ぶ2人。
水に浮遊するこの島の生と死。

よく映画を観るときに
ああ、理解出来なかった。
作品の意図を掴めきれず
勝手に自分が悔しくなることもあるけど
私にとってこの作品は
今の私の状態のまま、
身を委ねるように、すっと心に入ってきた。

私のまだ動く身体。
生きてるときに生きれるように
身体という船を、動く限り
漕いでいこうと思う。

コメントで残されていた高橋泉さんの
生きていない生。死んでいない死。
が、とても頷ける。

長い作品ですがいつまでも観ていたい作品でした。
指