メッチ

ゴールド・ボーイのメッチのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
3.9
壮年と青年は少年だった。それは黄金の少年時代であり、それと同時に一瞬にしてなくなるものでもあった。

確かにサスペンスものとしてだと公式が宣伝でうたっているような「ネタバレ厳禁」みたいな視点でみるとどうなんだろ?とは思ってしまいします。広告のようにただのサイコパスバトルものとしてとか、「展開が二転三転して!!」というのもありましたが、おおよその展開は予想できてしまいました。
でも、予想できたからつまらないわけではありません。それ以上になぜ彼らはそれをせざる負えなかったのか?とか、彼らが生きている沖縄(日本)という環境や生い立ちを考えさせる描写があったことに魅力を感じました。

あらすじは、沖縄県内の大手企業の会長の婿養子である東昇は、妻から離婚を告げられる。そんな彼は、遺産相続を目的とした計画を実行する。一方、もう1人の主人公の安室朝陽は、友人たちと記念写真を撮る最中に、東昇の犯行をカメラに収めてしまった。最初は戸惑うも、貧困に苦しむ少年たちはこの証拠を使い脅迫して、大金を得ようと企てるのであったのだが…。というお話。

沖縄を舞台にしたことは説得力があったかと個人的に思いました。それは本土よりも戦争が隣り合わせであるうえに、明るい観光地のイメージと裏腹に全国の平均を上回るほどの若年層の貧困率が高いことだからでしょう。如何に少年たちの貧困さが伝わりつつ、貧しさのあまりお金を自らの力で作り出すことよりも他者から奪うことを判断してしまうところは自然の摂理なんでしょう。別作『万引き家族』や『パラサイト 半地下の家族』など貧困をテーマにした作品をみていれば言われなくても分かることかと。
何がこの作品が魅力的かというと、憶測で登場人物が何故このような人間に構築されてしまったのかが伺える要素が描かれていたことかと思います。サイコパスのサスペンスという表面的な要素以上にあったかと。サスペンスという表面的なものはおまけであって、キャラクターたちの背景を考えさせるのがメインだったと思わせる作品でしたそんな感じでした。
メッチ

メッチ