スラバヤ

ゴールド・ボーイのスラバヤのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
4.5
現代映画のテンプレート、顔のアップ、高頻度のカッティング、心境に沿ったBGM、抱き合う2人の表情ショット、モノローグを差し込みながら、明らかにその解体をやってのけた映画。例えば声、モノローグの演出からして素晴らしい。日記、手紙、誰かから読まれることによってこれらの物体は機能を帯びるのだが、その自然さ、どのようにすることで冒頭のあのモノローグを挿入することを可能にしたのか。真実を示す証拠が映像→文字→音へと変化する過程も、生々しい死者たちの写真が死者から送られてきた生者の写真へと変奏されるように、実に明瞭な演出によって示されている。照明、エレベーターを降りる岡田将生にかかる薄ぼんやりとした光、母の顔を覆う暗闇、前出燿志が作戦会議中に顔を後ろに逸らし、不穏さを曝け出すあの暗さ。車内でピンボケする人物は、当然幽霊的な死者の言葉を口にせねばならない。ナイフで高校生を脅す長回し、車内に4人の人物が同乗する滑らかな動き、毒を口にした人物の倒れ込み、実にぎこちない現代的なカッティングにおいて、不意の運動性が輝かしさを増す。計画実行場所での回転パンは延々と風景を映し出し、星乃あんなが振り返った場所は二度示されることがない。劇伴は果てに消え失せてしまい、空を横切る機体の音が鳴り響く。テンプレートはバラバラにされ、既に意味を喪失している。
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