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ゴールド・ボーイの1234のレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
5.0
騙されたまま生きてる方が
よっぽど幸せな時間を過ごせることを、これでもかと教えてくれる作品でした。

誰も裏切っていないのに、
互いに騙している。

ラストで米軍機が低空飛行で飛んでゆくだけで、
日本人なら「あ、これで嘘が暴かれてゆくんだな」と分かってしまうのが悲しい。

それに関わらず、舞台を沖縄にしたのは大正解だと思います。
だって「何もなければ」みんな「幸せそう」なんだもの…
騙されて生きていれば、全員が幸せ。

終始、緊張感過剰の時間で力が抜けず、終演後は、大変な脱力感です。

帰りの終電間際の神田駅ホームで、
会社員とおじさんが本気のつかみ合いのケンカをしてる光景をみて、
「ああ、日本って平和だな…」と救われた気持ちになりました。

見終わると、そんな人間になる映画です。
すごい映画です。


…強いて言えば、「解が出ない」という理由が狂気の原動力であるのは、
少し弱いように思います。

中盤までの、なぜかわからないけれど人を殺めたいという土壌が、数学の登場で狭い頭の中に押し込まれてしまって、もったいないなと思いました。

この映画の魅力は、いつのまにか内側から外を見ているところから来ているのに、
数学の天才という設定で、外からの助けを借りてしまっているからです。

あのまま、普通の男女の
「なんだかわからない衝動」と
「ギリギリで思い止まろうとする葛藤」が絡み合うようにすれば、
13歳の感性も相まって、
もしかしたら伝説の映画になったかもしれません。

海で頑張ってこっちから砂山のトンネルを手で掘っていたのに、終盤で向こうからお迎えのトンネルが掘られてしまったような、少し残念な物足りなさが残ります。

その終盤の尻切れトンボ感が、
製作者にあの最悪なエンディング曲を選ばせたのかな、と思います。
エンドロールを最後まで見ずに席を立ったのは久しぶりでした。

ただ、そこを差し引いても、
ほんとにすごい作品でした。
見ないと損します。

アニメや「お芝居映画」から席を譲ってもらって、
もっと大々的に上映されていいと思います。
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