乙郎さん

ゴールド・ボーイの乙郎さんのレビュー・感想・評価

ゴールド・ボーイ(2023年製作の映画)
4.0
見逃さなくてよかった。中国の作家・紫禁陳のクライム青春小説(既読。面白かったです。)を原作に、沖縄に舞台を変えて作られた映画。監督は金子修介。
 沖縄を舞台にしているが、柳島克己の撮影といい、谷口尚久の大仰な音楽といい、全力でこれはフィクションですよと伝えている。「沖縄」で「柳島克己」といえばどうしたって連想してしまうのは北野武監督の傑作『3-4x10月』('90)や『ソナチネ』('93)なわけですが、違うものとは思いつつも、これも限定された時間における夏の話である辺りで括られるのかもしれない。
 個人的に嬉しかったのが、沖縄を舞台にした映画ってどうも画面がチープになりがちなところを回避していたところ。日光が強いからか画面が白くなりがちで、かつ陸地面積の狭さも影響している感じがする。しかしそこはやっぱり柳島克己。明度をかなり落とした画面は、ある種のリッチさを醸し出すことに成功しているし、あえてかのように観光地を避け、住宅密集地を場所説明的にもインサートするのは、登場人物たちの逃げ場のなさを象徴しているよう。これが僕が見たかった沖縄映画の画面。
 で、原作小説読んだ時、どことなく井筒和幸の作品を連想したんですね。ただ、音楽や画面や演技で作り物感を出すところは大林宣彦的でもあるし、多分『ゴールド・ボーイ』というタイトルは韓国映画の『オールド・ボーイ』から来ていると思われて、あれは日本の漫画を韓国に舞台を変えたものだった。内容も、このストーリーの陰惨さは韓国ノワール的。でも、原作の舞台は中国。この、何映画とも括れないけど間違いなくなんらかのジャンル映画である部分が非常に好ましかった。

 余談だが、浩たちが見回りが多くて那覇には行かなかったと言う場面、やっぱり那覇はあんまり画面として映えないと思われたのかなと思ってしまった。まあ、むべなるかな。
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