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ありふれた教室のKUBOのネタバレレビュー・内容・結末

ありふれた教室(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

今日の試写会は、ドイツ映画『ありふれた教室』。

本作はタイトル通り『ありふれた教室』で起こる学校あるあるの歯車が、少しずつ悪い方向に転がりだし、収拾のつかない事態にまで陥っていくサイコスリラーだ。

私は教師だから、本職目線で見ちゃうから、どんどんと蟻地獄のようなピンチに陥っていく若い先生の姿を、なんとかならんのかと神経すり減らしながら見てました。

まず、冒頭の「お財布検査」。今の日本ではあり得ません。「荷物検査」というものがあったのは、おそらく昭和の終わりくらいまででしょう。ドイツだとまだやってるんだろうか?

生活指導に対する共通理解ができていない。ひとつの学校で、盗難なら盗難で、どのように対処するのかしっかりとしたマニュアルがなければいけない。本作のように、厳しい先生と優しい先生みたいに対立しちゃうようじゃ学校としてダメ。

抜き打ち検査の結果を元に犯人を特定するにしても、「移民の子だから疑われるんですか⁉︎」となるところに今のヨーロッパの公教育の現状が垣間見える。

そして問題の事件が起こる。

さすがに職員室で盗難が起きたことはないけれど、あのお母さんは異常だね。本作は「誰が犯人か?」ということに答えは出さず、ここから崩れていく「生徒と教師」「保護者と教師」「教師と教師」の信頼関係にポイントが置かれているわけだが、あのお母さんが、もう少しマシな人間ならこんなことにはならなかっただろうな〜。

映画前半では明るく生き生きとしていた若い先生が、どんどん追い詰められ、神経症的になっていき、学級は崩壊していく。

おそろしいことに、今実際に、学校現場ではよく見られる光景だ。4月に着任した新採用の先生が、夏休み明けにはもういないなんてことも珍しくない。

是枝監督の『怪物』でも、ちょっとした誤解やすれ違いで大きな疑心暗鬼が生まれていく様子を描いていたが、本作で起こることもひとつひとつは大した事件ではなくとも、ボタンの掛け違いのように、少しずつ対処を誤るだけで「生徒と教師」の信頼は崩れていく。

何も解決しない、最悪とも取れるラストシーン。『金八先生』だったら、絶対「解決」して深イイ話みたいにするんだろうけど、ドイツ映画、突き放してるなぁ。

『怪物』の時にも書いたけど、本作も、見終わった後、誰かと話したくなる作品。願わくば、お子さんの学校で、こんなことが起きていませんように😅
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